世界は何処に

この小説はキャラ崩壊を含んでいます。遠慮したい方はこちら

全部、天使疾患が声まで進んだコレットの独白なのですが、

このテーマが、お題にそっていて、「コレットの周り」がどんな人々だったか、で

コレットの人格が違える様を描いているので、ご承知ください。

長さはまちまち。でも総じて短め。

当サイトはあくまで「原作沿いの白コレット推奨」です。

01. 世界に殺される君

02. 世界が愛した君

03. 世界を疎んだ君

04. 世界を愛した君

05. 世界を壊す君

01. 世界に殺される君

私は消える。

それでも、

羽がついて

食欲を忘れ

睡眠を忘れ

痛みを忘れ

ぬくもりを忘れ

もう声さえ出ない私だけど、

今でもまだ、ヒトでありたい、だなんて思っているんだ。

もう私はヒトではないのに。


みんなは気持ち悪いって思ってるよね。

みんな、優しいから、思っていないとしてもでも、

私が、辛い。

でも、投げ出すことはできない。

投げ出したとしても。投げ出せたとしても。

神子としての理由を失った私に、帰る場所なんて、あるのかな。

イセリアのみんなは優しいけど、でも、

私に向けられた希望はすべて失望として帰ってきて、

みんなは私に「何故帰ってきたのか」って……思うよね。

そして私はそれを退けることができない。

だって事実だから。


私は消える。

みんなが私を、消した。

私は私を殺す世界のために、天使になる。

そのうち、

世界だけでなく、記憶からも、

消えていくんだろうね。

02. 世界が愛した君

私は幸せだった。

イセリアのみんなに愛されて、育った。

だから恩を返すために、今旅に出ている。

私がみんなに愛してもらった分を返せるのは、神子であることだけだもん。

だから、みんなにお礼の意味を込めて、私は天使になる。

私が幸せになれたのは、神子だから。

だから、幸せを捨てる。

幸せを捨てる。

私を愛してくれてありがとう。

愛してくれたんだよね。

愛してくれたんだよね。

もし、愛されていなかったのだとしたら、

私は何で神子になれたんだろうね?


イセリアのみんな、ありがとう。

みんなは私の救った世界で幸せになって。

愛してくれてありがとう。

みんなは、私を、愛してくれたんだ。

愛してくれ──たんだ。


あれ?

なんで、なんで、過去形であることにこんなに傷ついてるの?

愛してくれたよね。今は、知らないよ。

だけど過去に確かにその出来事はあったはず。

だから私はそのために、──愛し返すことができたのかな。

分からないよ。

でもこれだけは言える。私は幸せだった。

その過去の幸せのために、今、幸せを返そうとしてるの。

それだけのこと。

やりたいことができて幸せ、なはず。

今、私は、幸せですか?


分からない。

私が思っていた過去の幸せも、真実のものであったかさえ、分からない。

03. 世界を疎んだ君

私は何故こんな世界にいるの?

私が世界に命を捨てるほど、

世界に価値があるもの?

私は世界から見て、ただの人柱。

なのに私は、世界のために犠牲になるの?

嫌だよ。

でも、でも、どうでもいい。

どうでもいいの。

私は世界が嫌いだけど、世界のために命を捨てるのは嫌だけど、

世界の中で生きたいとは思ってないもん。

だから命なんてどうでもいい。

羽がついて

食欲を忘れ

睡眠を忘れ

痛みを忘れ

ぬくもりを忘れ

もう声さえ出ない私だから。

私はヒトでも、天使でもないよ。

ただの神子。


それだけのこと。

神子は神の子。だから消える。

──もし、私のお父様やお母様が神だとしたら。


何故世界を、私のための物にしてくれなかったのですか?

04. 世界を愛した君

世界が救われればいい。

どんな形でも、世界が救われればいい。

世界が潤えばいい。

異世界があるんだって。この世界の裏、天秤の片端。

この世界が反映すれば、衰退する世界なんだって。

旅についてきたみんなは、悲しそうだったけど、私はにこにこ笑ってた。

当たり前だよ。

私はこの世界が好きなの。

この世界だから、天使になってもいいって思ったの。

なのに、別世界を救うことまで強要するなんて、そんなこと、しないよね。


私はこの世界を救うの。

だから、異世界が衰退しても滅んでも、痛くもかゆくもない。

むしろ、この世界の幸せを奪った異世界が憎い。


今まで幸せだった異世界さん。

もう、別に、いいよね?

幸せにならなくて、いいよね?


誰も天使になるのを阻まないで。

この世界が幸せになればいい。

せっかく私が天使として犠牲になるんだもの、

この世界は、幸せになってくれないと……。


私一人の命で、世界が幸せになるなら、安いよね。

みんな、その話題には触れてこない。

私が逃げ出すのを恐れてるんだ。

私は逃げ出したりしないよ。

だから誰か、そうだよって、うなずいて。

05. 世界を壊す君

目の前に、私をねぎらう人が現れる。

笑みでこたえることしかできない。

握り返そうとしても、握られた手の感覚も分からない。

どういうこと?

これは、どういうこと?

たぶんこの人は、私に世界を救ってほしいのだと思うんだ。

世界を救えるのは、私だけなのですから、当たり前だよね。

みんなそうです、私しか世界が救えないから、こうやって私にすがるの。

私しか世界は救えない。

だから、みんな、私をあがめるんだよね。

おかしいな。

ずっと過去、神子は失敗してるよ?

私が世界を救えるかも、分からないのに。

あ、そうでもないか。

私は世界を救うだけの存在だもん。

他の方から見れば、そうなるよね。


世界を救える私をもっとあがめればいいのに。

なのになぜ皆天使になり死ぬことを祈るの?

救世主に、死ねということなんて、おかしいよ。

おかしいよ。

おかしいよ。


──おかしいのは、私だね。

分かってる。

でも、やっぱり、みんなは私を救世主だと思っているもん。


何を考えているのかな?

私に死ねということが、どれだけ命とりなことか、知っているのかな?

私が救いの塔に行かなければ、みないずれマナ不足で死ぬ。

私が子供を産まなければ、新しい神子も生まれない。

そのこと、知ってる?


私、想像するも恐ろしいこと、考えてるんだよ。

ねえ、みんな、分かってるのかなぁ?

世界を救えるのは私だけ。

……世界を壊せるのも、私だけ。

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