眠れない夜
「眠れない夜は星を数えると良いんだよ?」
夜風に当たっていたら、柔らかな…彼女らしい声が聞こえてきた
「コレット、か?」
後ろに気配を感じて、振り返ればコレットが髪を冷たい風に靡かせながら立っている
「えへへ、隣…いいかな?」
「おう、いいぜ」
にこっと笑うと、コレットは隣に座った
「なんだか、風が強いねぇ〜。ひゅおーって聞こえるよ」
前に聞こえすぎて怖いと言った耳に手を当て、すごいねぇ。と呟いている俺もつられて、耳に手を当てた
「俺には聞こえねぇや」
苦笑いをしてコレットを見ると
「私には、聞こえてるよ」
まるで、私にはロイドの考えてることが分かるよ。と言いたげに言った
世界を統合し、エクスフィア回収の旅に出て数ヶ月
折角、神子から解放されて…これからは“普通”の女の子として生きていけると言うのに、文句も言わず一緒に来てくれたコレットには本当に感謝している
父さんは行ってしまったし…皆もそれぞれの道を歩み始めたから、本来なら俺は一人で、旅に出るはずだった
「あのね、ロイド…クラトスさんの…お父様のことが心配なら私に言っていいんだよ?」
「なぁに言ってんだよ。父さんは強い、あいつに心配なんていらないただ…」
「ただ… 会いたいの?気になるの?」
空を見上げながら、コレットが訊いてくるコレットは手を上げると、星を掴むように手を握った
「…気になるのかもな
だって、もう会えないんだしな」
脱力して、寝転がった。それを見たコレットも真似するように寝転がる
耳をすませてみる
コレットの言う、風の音を感じてみたかったから
「あのね…ロイド」
「―ん、なんだ?」
ぼぉっとしていたので生返事になってしまったが、コレットは気にせず続けた
「…眠れない夜は、星を数えると良いってことクラトスが教えてくれたんだよ」
その日は、昔父さんに肩車してもらったことを思い出しながら、風の音を探して
…コレットと一緒に光輝く星々を数えながら…眠りについた