ゆらり揺られて貴方の手に

私の気持ちに気付いてくれるほど、ロイドは鋭くない


ほんとに、ロイドは鈍いんだもん


「ゆらり揺れて貴方の手に」


ロイドは恋愛には鈍いけど、全てにおいて鈍いわけじゃない
たまに、疑問には思ってしまう。ほんとにロイドは鈍感なんだろうかなって…もしかして、フリしてるだけじゃないのかなって
…だって、たまに思わせ振りなこと、言うから

だけど、それはきっと、私の思い違いだ。真っ直ぐで優しくて純粋なロイドだもん…

それに、皆に訊いてみたときも「それは無いでしょーよ。あの単純バカのロイド君だぜ?」と言う風に言われたし…


ただ、恋愛以外のことについて鋭いことは事実だ
私の感覚が無くなったときも気付いてくれた


「ほんっとロイドって鈍ちんなんだから!!ーあーぁ。これじゃあコレットが可哀想だよ」とは銀髪の友人談である。その言葉に仲間たちは皆頷いた…反論するロイドと苦笑いを浮かべる私を除いては





「ちくしょー。なんなんだよも〜っ、ジーニアスのヤツ!!」
ロイドはとても悔しそうに言った
確かに、仲間に面と向かった鈍いと言われるのは心外だろう
「あははは…」
だけど、そんなロイドには悪いけど私としては薄く笑うことしか出来ない
そんなこと無いよ。とフォローは入れられないのだ
皆には筒抜けな程、分かりやすい私の気持ちに気付いてくれないのだから
「な……っ!!コレットまで、俺のこと鈍いって思ってるのか?」
さらに落ち込んだ様子でずいっと私に近付いてくる
「えぇっと……」
近くにあるロイドの顔を直視せずに言葉を濁らせたけど、言葉が終わると同時に、怒ったように口を尖らせたロイドに向き合った




―ち、近いよ!ロイドッ…。嫌じゃない、嫌じゃないけど
「なぁ、コレットも俺が鈍感だと思ってるのか?」
そう言ったロイドの声が先程までと雰囲気が違う
「、どしたのロイド?」
じっと私を見つめてくる瞳が目を反らすことを許さない
「俺もコレットのこと、好きだぜ?」
とニコリ、笑う
「だ、だけど…」
ロイドの言う好きと、私の好きは違うから
………っあれ?
ほんとに違うのかな?
ロイドに確認を取ったわけでも無いけれど、勝手にそう思っていただけだから


すっとロイドが迫ってきた。おでこに一瞬温かい温もりが触れる
これって、そのもしかして……おでこ、だけど…
「………っ」
反射的にパッと身を離そうとした私を、ロイドが抱き締める
―キス、だよね?
神子として、誰からも大切に扱われ、だけど遠巻きにされてきた私にとってキスは初めての体験だった
もしかしたら、もっと早くに体験している方が普通なのかもしれない

理解してくると、頬が熱くなってきた…とっても嬉しい筈なのに恥ずかしい気持ちでいっぱい

「なぁ、コレット
どういう種類の、好きな人に、これってするんだろうな?」



鈍感なフリをしているだけなのかもしれないと、何度も疑ったことはある
だけど、今日のこの時までいつも、その考えは否定し続けたことだった

今のロイドは鈍感なんかじゃない
私の気持ちも知っていて、それで遊んでる
知ってるのに知らないフリして私に答えさせようとしてる


「………それはね、愛って言うんだよ?」

私がずっと、鈍感なフリをするロイドに求めてた感情


私は、ほんとにロイドが大好き。ロイドが欲しいんだよ?

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